Marioレポート2


2.洗礼
 
 現地に到着して、1週間が過ぎた頃から下痢が止まらなくなり、発熱も始まりました。これは日本から渡航する者のほとんどが経験することのようです。日本の高度に管理された衛生環境になれている体にとって、ホンジュラスの不十分な衛生環境の中では、ごく普通の飲料水にしろ、食物にしろ、最初は何らかの悪影響があるのでしょう。

 十分な注意を払っていたにもかかわらず、何かにあたってしまった様です。また現地には家蚊を媒体とするデング熱マラリアがあり、これらに感染した可能性もあったので、診療所に行って薬をもらいました。

 また、私が滞在した孤児院では、お湯が出ないので、毎回水シャワーをあびていたのですが、お湯につかる事になれている日本人の体には、これもこたえた様です。現地で簡易電熱器を買って、バケツに汲んだ水を温めて使うようにしました。やがて、下痢も熱も少しずつひいていきました。
 
 またある日、この孤児院を経営する修道会のシスター志願者のお姉さんが、病気で手術をする事になったというので、病院へお見舞いに行きました。しかし、日本の病院や医療レベルになれている私にとって、現地の病院は驚くべき有り様でした。

 私も医療関係の仕事をしているので、多少の知識はあるのですが、衛生管理のレベルは極めて低いと言わざるを得ませんでした。使い捨ての注射針や綿花が、そのまま廊下のあちこちに落ちているのです。貧しい人々は、これらを持ち帰り、縫い針に使ったりしています。これは、考えられないほど危険なことです。

 また、古びたX線装置のほかには、およそ医療機器らしきものは見当たりませんでした。さらに、医師さえ見当たらないことがあります。事実、私が見舞いに行った志願者の姉は、痛みでひどく苦しんでおり、手術の日にちも決まったので、術後の日のある夜、再び見舞いに行くと、「医師が来なかったので、手術はなかった」というのです。
 
 手術は別の日に延期になりましたが、その日も医師は来ませんでした。その間、痛み止めの注射をもらって、ひたすら医師が来るのを待つしかありません。この様な患者たちが、いつも病院の玄関から通りに溢れて、一日中医師が来るのを待っています。

(つづく)