Marioレポート3


1.洗礼 (その2)

 ホンジュラスで医師になる者は、みなキューバで医術を学びます。医師を目指す事が出来る者は、国内の富裕層ですが、それでも米国の高度医療技術を学ぶ経済力を持つ者は、ごく僅かと聞きました。そのため医療レベルは、極めて低いのです。事実、この志願者の姉は、ごく単純な虫垂炎だったにもかかわらず、一人目の医師は手術に失敗し、二人目の医師が再度手術をすることになりました。彼女はまだ20歳の学生です。

 こんな事もありました。

 孤児院のひとりの子の親戚が、手術をするための輸血用の血液が必要なので、シスターが私に提供を申し込んだのです。ホンジュラスでは、輸血用の血液は、現金で買うのですが、貧しい人はとても購入出来ないので、親戚、友人から血液を提供してもらうのです。

 その血液はおそらく必要な検査を受けないまま輸血されるでしょうし、その際に、どんな針が使われているのかも分かりません。おそらくホンジュラスでの輸血による感染症の発生率は、高いと思われます。

 しかし、シスターたちでさえ、その様な知識はないので、「マリオ、これは大切な慈善ですよ」などと言って勧めたりします。さすがに私は、きっぱりと断るしかありませんでした。