Marioレポート6

子供たちが装飾したクリスマスデコレー



3.  12月23日: もうひとつのホンデュラス

 その事件は、クリスマスを直前にひかえた12月23日、その準備のために大勢の買い物客でにぎわうホンデュラスの第2の都市サン・ペドロ・スーラで起きました。

 市内を走っている1台の路線バスが、突然2台の車にはさみうちにされ、複数の男たちによって乗員乗客全員が、機関銃で射殺されたのです。女性子供を含む23名が殺されました。全くの無差別殺戮でした。死体には犯行声明文が巻き付けられていました。

 犯人たちは、かつてホンデュラスがまだ軍事政権だった80年代初めに、反政府ゲリラとして活動していたグループの名を名乗っていました。ホンデュラスでは、今年4年に1度の大統領選挙があり、その年には必ず治安が悪化するのです。

 かつて協力隊隊員として、3年間ここで働いた私の友人の時代には、大統領選挙の年には、他国の隊員のホンデュラスへの入国は、危険のため禁止するという通達がJAICA(国際協力事業団)から出されたと言っていました。

 事実、この事件をきっかけにして、その後の2週間で全国各地で、さらに50人以上が同様の無差別殺戮の犠牲になりました。16歳の女の子2人が縛り首にされて、犯行声明文を身体に巻き付けられたまま、遺体を放置されるという事件も起きました。

 事態は一気に緊迫し、サン・ペドロ・スーラの市長は、軍隊に出動を要請し、街中が兵士と装甲車に埋めつくされました。ホンデュラス枢機卿オスカル・アンドレス・ロドリゲス師(サレジオ会員)は、「心を騒がせてはならない」という聖句を引用して、全国民へ平静を保つように促す声明文を、全国紙に発表しました。サン・ペドロ・スーラの司教ロムロ・エミリアーニ師は、「このままではホンデュラスは、コロンビア化してしまうだろう」という懸念を、全国紙に発表しました。

(つづく)
[写真:子供たちによるクリスマスデコレーション]