Marioレポート7

ラスティーナ。高校卒業式



3.12月23日 (その2)

 日本には存在しないことで、この国(中米全体)に存在することのひとつは、激しい貧富の差です。指導者層を始め、一部の富裕層があらゆる利益を私物化してしまうのです。そして本来それらの利益によって成り立つ教育や、医療、さらに労働賃金に至るまで、一般国民には還元されません。政界内や企業間の賄賂や汚職は、公然の事のようです。隣接する中米各国の凄惨な内戦の歴史に比べて、比較的平穏を保ってきたホンデュラスで、この時期にこれだけの凄惨な事件が、立て続け起きた事の背景には、これらの貧富の差から生じる激しい歪みがあるように感じます。

 一般的な全国紙には、連日過激な風刺があります。クリスマスシーズンには、聖書の「三博士の来訪」をもじった風刺漫画が載りました。貧しい家に生まれたキリストを祝って、東方から3人の博士が宝物を持ってやって来たという物語に代わって、貧しい人のボロ小屋を訪ねてきたのは、3人の立候補者です。そして、両手を差し出してこう言っています。
「おまえにやる贈り物は何もない。用があって来たのだ。」
貧しい人の手には、投票用紙があります。

 また、別の風刺では、ひとりの立候補者が、通りをたむろする不良少年にこう言っています。
「おい間抜け!レゲエ野郎にしてやるから、俺に投票しろ!」
その少年はこう言い返します。
「おまえアホか!おまえに投票してやるから、俺に教育をよこせ!」

 国民はこれらの事を良くわかっています。自分の生活の中に、そのまま存在する現実だからです。私の滞在した孤児院の水道工事に来ていた25歳の青年は、「俺は自分の家族以外、何ひとつ持っていないよ」と言っていました。現地で私にスペイン語を教えてくれた先生は、選挙事務所の前を通りかかった時、「彼らは食事に誘ってくれたり、プレゼントをしてくれたりするわ。でも選挙が終わったら、2度と来ないわ」と笑い飛ばす様に私に言いました。

 例えばホンデュラスの投票用紙はA3くらいの大きさの紙に、立候補者全員のカラーの顔写真が載っています。そして、その下の投票欄にX印を付けるようになっています。これは、有権者のうち、かなりの数の人々が、字が読めないか、書けないためです。

[写真:孤児院育ちのラスティーナ(21)。高校の卒業式]