Marioレポート9

シスター



4.シスター斉藤を訪ねて
 おととし、初めてのホンデュラス訪問を終えて帰国した直後、ひとりのシスターと偶然に知り合いました。彼女は今グレガシオン・ド・ノートル・ダムの斉藤雅代シスターで、私とほぼ同時期にホンデュラスと中米各地にミッションで滞在していた事が分かったのです。私たちは日本で意気投合し、互いに次回の渡航予定を持っていたことから、是非次回は現地で会おうという事になったのです。それが実現したのは、今年の1月でした。彼女が私の居る孤児院を訪ねて来てくれたのです。

 私たちはお互いの体験や、感じていることを存分に分かち合いました。互いに日本語をしゃべるのは、数ヶ月ぶりだったので、時を忘れて話しました。共に中米の土を踏んだ日本人として、その心から溢れ出て来る想いは同じで、とても心強く感じました。彼女を見送ってから数日後に今度は私が彼女を訪ねました。
 
 彼女の住んでいる街サンタ・バルバラは、私の街からバスを2本乗り継いで5時間くらいの所にあります。ホンデュラスの街は、どこも同じく山間に合間に開けていて、すそ野を降りるに従って、街の中心部になり、山ろくを登るに従って、貧しい地区になって行きます。

 彼女の住居は、その山ろくを登った貧しい地区にあり、今は日本にはもう存在しない様な悪路を、最後は車も登れないので、這いつくばる様にして登りました。修道院とは言えないごく普通の家屋に、カナダ人のシスター3人と共に彼女は暮らしていました。彼女たちのミッションは教育で、私は早速その現場を見せてもらいました。

 ひとつは同じ山中の貧しい人々の家をそのまま借り切って事務所にした「マエストラ・エン・カーサ」(自宅教室)という名のプログラムで、これはラジオを使った通信教育です。街の中心部から離れた山間の貧しい地区に住む人々は、経済的に困窮しており、子供の頃から働かねばならず、正規の教育を受ける機会はほとんどありません。

 彼女たちの仕事は、彼らに教育を受ける機会を作り出すことで、街に出て来ることの出来ない山間の住民に、ラジオを通じて授業を行い、その学費も格安に設定し、彼らに高校卒業の正規の資格が取れる可能性を与えることです。「自宅教室」は、そのための活動拠点で様々な手続きをするために、山間の住民たちが集ってきます。

[写真:シスターエリサ(92)。40年間孤児たちの面倒を見続けて来た最長老のシスター。今なお現役。]