Marioレポート10

4.シスター斉藤をたずねて (その2)

 私が会ったひとりの30代くらいの婦人は、そこに来るバスに乗るまで3時間歩いて来たと言っていました。おそらく子供の頃から働いて、15−6歳で結婚して子供を産んだであろう、一般的な貧しいホンデュラス女性の彼女にとって、このプログラムは、自分をひとつの枠から飛び出せる可能性を持つ唯一のものでしょう。そのためには、1日がかりでも山奥から出かけて来るのでしょう。彼女の瞳は若々しく輝いていました。

 もうひとつの施設は、貧しい環境の婦人たちを集めて、一定期間共同生活をしながら、裁縫や栄養学など、生活を改善するための様々は知識を教えていくための寄宿舎です。貧しい婦人たちは、それらの知識を得る機会がなかったために、極めて劣悪で不衛生な環境の中で生活しており、それらを原因とした病気の発生や、子供の死などにみまわれてしまいます。その様な環境の中に生きる彼女たちに知識を与えることが、この施設の目的です。

 いずれの施設も4輪駆動の専用車でしか走れない悪路を分け入った山奥にあります。それは、これらの施設の恩恵を受けるべき人々がそこに居るからです。しかしそれはまた、危険をも意味しています。ホンデュラスでは、街の中心部から外れて山間部に入っていくにしたがって、犯罪率は高まるのです。貧困層の彼らの中には、強盗を働く以外に、金銭を得る手段がない人々もいるのです。事実、シスターたちの住居にも強盗が押し入り、車と金銭が盗まれてしまいました。ホンデュラス人でさえ、立ち入ることを好まない山奥に、明らかに先進国の外国人女性とわかる4人で暮らしているということは、一部の貧困層にとっては、格好の標的なのです。