停戦協定破棄

民族紛争がほとんどない国に生まれた幸福を、痛感するのは、常に他国の民族紛争に巻き込まれたとき。ここスペインでは、しばらく停戦協定が有効だったETAバスク地方の解放戦線)が、破棄を申し出た。

テレビで停戦破棄を発表したエタの二人は、覆面をかぶっていて、どうもアメリカのKKKを思わせるような、不気味な感じだった。

それもこれも、選挙が来年に迫ったからだという見方が強い。思い起こせば、2004年、マドリッドのアトーチャ駅で起きた列車の爆破テロ。あの時は、エタの仕業ではなかったけど、その時も選挙があり、イラクへの兵派遣反対へと流れ、当時の政権(民衆党)が変わったのだ。そして、現政権が誕生した。

そのくらい、テロと選挙の関係は深い。当然、来年の選挙に向けて、停戦もなくなった今、またテロが起きるのではないか、という不安がマドリッド市民の間では広がっている。それでなくとも、昨年暮に起きたマドリッド空港のエタの爆弾テロのショックが、まだ残っている。

そんな御国事情があるところでは、いやでも民族アイデンティティを意識せざるを得ない。日本にいると、ほとんど意識しない感覚だ。時々移民の問題があるけれど、それがまだ脅威にもなっていない。そして、テロはほとんど起きない。

これからどうなるのかは、わからないが、そんなことを思わせる日であった。