ロマンティック街道の旅14 ルードヴィッヒの城 3

vengavale2007-10-10


さて、「機動戦士ガンダムSEEDデスティニー」では、ザフトの「ミネルバ」の主砲である「タンポイザー」。ルードヴィッヒ2世も好んだこのワーグナーの歌劇の物語は、こういうものです。

中世ドイツ。タンホイザーという騎士が、エリザベートという女性と恋をしていました。でも性欲におぼれるようになり、次第に堕落していきます。改心して、まっとうに生きようとするも、やはり怠惰な生活の誘惑には勝てず、快楽の女神を讃える詩まで詠んでしまうしまつ。エリザベートは、追放されローマに巡礼の旅に出るタンホイザーの罪を許してもらえるよう、命を落とす。帰ってきたタンホイザーは、彼女の犠牲に悲嘆にくれ、自らも命を落とすのだった。

なんだ、一見純愛に見えるけど、タンホイザーの堕落した欲望が原因なのではないか。それでも、ルードヴィッヒはこの物語の絵を部屋の壁に描かせ、美しい二人を讃えた。

そして、「ガンダムSD」で、副官が担当していた砲「トリスタンとイゾルデ」。これはシュトラスブルグという人の原作がある、中世英国の物語。アイルランドの王女イゾルデは、結婚するために出た旅の途中、トリスタンという護衛の従臣と恋に落ち、「愛の薬」なるものを間違って飲んでしまったために、二人は激しい恋に翻弄される。イゾルデが嫁いでもなお、二人の関係は続き、夫であるマルケ王はトリスタンに切りつけ、トリスタンはその刃を享受する。イゾルデが駆けつけるも、トリスタンは息絶え、イゾルデも後を追って亡くなる。

ロミオとジュリエット」のような悲恋物語。結ばれない恋ほど、美しいものはありませんなあ。ルードヴィヒもこの悲恋が大好き。この物語の絵も、壁に描かせました。

そして、ワーグナーの歌劇を独り占めしたいために、城の中に専用の劇場まで作ってしまったルードヴィッヒ。結局この城の完成前に、彼は狂人と診断されて、捕らえられ、最後は謎の死を遂げます。

「民衆の目で穢れることを恐れる」と最後までこの城を大衆に公開するのをこばんだ彼。それが、いまや観光客の目で穢れきってしまっているとは、なんとも皮肉です。