金釘流

外国にいて、日本語に目覚めることがある。それは、慣れない環境が異化作用して、普段当たり前に感じて不可視になっているものが、可視化する、意識化するという現象だ。失くしてみて、初めてそのモノの価値に気付くっていうのも、ソレに似ている。

 
今回は、ツユさんから金釘流という言葉を初めて聞いた。「お前は金釘流だからな」というように使う。


金釘流とは何か?それは、自己流のことであり、特に字が下手な人のことを言うときに使う表現でもあるらしい。


そう考えると、そういう形容詞で何かを表現するなんて、このごろやらなくなったと感じる。もちろん、昔使っていた表現を使わなくなった代わりに、新しい表現が生まれているし、表現力が特別乏しくなったとはいいきれないけど、そういう言葉って、どんどん消えていく。


もう一つ、初めて聞いたのは、「豚子」(とんし)という言葉。自分の子供を謙遜するときに使ったそうだ。「うちの豚子は・・・」というふうに使うらしい。それにしても、豚の子かあ。そのときに、そういえば、妻を謙遜する言葉はあるのに、夫を謙遜する言葉はないなあ、と気付く。「愚妻」「家内」など、女性は下位に置かれる言い方があるのに、男は「主人」「旦那」など、へりくだった言い方はない。


そういうへりくだりの言い方は、今ではほとんど使わないけど、英語に直すと中性になるのは面白い。どういおうと、愚妻も家内もMy wife、主人も旦那もMy husband, 豚子もMy child。だもんね。


[vengavale 今日のいちおし] (本)「パプリカ」
パプリカ (新潮文庫)

最近今敏(こんさとし)監督のアニメ映画が公開されたので、きっと特集で見た方も多いでしょう。その原作の筒井康隆「パプリカ」です。vengavaleは、大学生のときハマった作家です。夢に入り込む、コードネームパプリカの活躍がおもしろい!